renga-study-report

連歌研究会-研究例

Renga, a linked poem study (Japanese language only)

私共で開催致しました連歌会の、研究例を、お恥ずかしいですが

少しだけお見せします。

大体それぞれ2時間くらいで、1巻の連歌を 巻きました。

第1回 連歌会(参加者5名)―歌仙

・おもむろに 硯とり出し 墨を磨る

・波頭(なみがしら)見て 心ときめく

・我が筆で 命の端(はし)を 捉えたし

・揺れか迷いか 筆先の線

・思い出は 山の上から 降りてくる

・器(うつわ)に映る 花びらと山

・筒井筒 誓い忘れし 徒然の日々

・酒 新しく ひとつ注ぐなり

【記】第1回目ですので、「輪廻」などのルールも少し脇に置き、連歌をする純粋なたのしみだけを

とりあえず共有する、そんなひとときになったかと思います。

お菓子もたくさんいただきました。

++++++

第2回 連歌会(参加者2名)―半歌仙

・雪解けの 水ほとばしる 荒瀬かな

・月を頼りに 舟の舵とり

・銀色の雫をうけて 若草や

・うぐいす さえずり 春の芽吹きよ

・ゆらゆらと 心揺さぶる 風、あらし

・龍の背に乗り 世界を渡れり

・闇拓く ダイヤモンドは 瞳のなかに

・確かに根付く 褐色の地に

・トウモロコシ 牛・ミルク・豆 育(はぐく)めり

・こだわらぬ 母、 また 花の笑み

・底抜けの 明るさまぶしさ 陽の光

【記】逆にして読んでみると、また違った発見というか、味わいがして面白く、

「トウモロコシ 牛・ミルク・豆 育めり / 確かに根付く 褐色の地に」

などは、別に短歌として優秀なものでも何でもありませんが、参加者にとっては大変

あざやかに情景が思い浮かぶものでした。

人との出会い、そして人生が展開していく事。

連歌は旅のようでもありますし、人生の縮図のような所も垣間見えます。

とても一人では、18句どころか1句さえも詠めるかどうか。

深い文芸遊びです。 そして、皆と一緒に たくさん励まし笑いました。

+++++

第3回 オンライン連歌会(参加者3名)―半歌仙

・花も葉も 光と影の 春の山

・月もとまどう 疾きこと

・散歩道 やさしさ香る 箒のおと

・笑む人の 花散り敷くところ

・目を瞑り、背中の日差し いつくしむ

・コロコロ駆ける 子供たちかな

・キリンの背 サファリの遊具 すべり台

・順番待つ子 上着ぬぎすて

・晴れ着きて 入学式の きよらかさ

・祝いの席に さくら ひと枝

・この日待ち 禁酒も明けて 頬ゆるむ

・未来を願い 盃 交わす

・おほみ空 日かげ照りそう のどけさや

・伸びる道筋 幾多もあれど

・風に乗り 勢いつけて 走り出す

・つばくらめ 飛ぶ 山さくら花

・花びらも 芝生広場を わたりゆく

・すべての花に 春の息吹や

【記】初めてのオンライン連歌会でした。オンラインならではの楽しみも見つけました。

「花の定座」「輪廻」といった、連歌のルールは承知していたのですが、今年は皆

お花見もできなかったのです。そんな年に、何故わざわざ花を控える必要があるでしょうか。

最後の3句も全員が花を詠んで、まさに花尽くしのクライマックスにいたしました。

「すべての花に」は、「すべての人に」(生けるものに)、という意味です。

この最終の句(あげ句)が出てきた時には、皆、喜びでどよめきました。

まさにこれが、今の私たちが言いたかった事!と。

こうして、今この時の「春の連歌」が出来上がりました。

++++

第4回 オンライン連歌会(参加者3名)―半歌仙

・ちはやぶる 神何ぞ 思召(おぼしめ)す

・誰を選ぶか ノアの方舟(はこぶね)

・救うのは 己と思い 励むべし

・常の日頃の ありがたきかな

・実家より 検査キットの 届きける

・平らかな天 眼前(がんぜん)にあり

・自粛中 日に日に澄んで ゆく空は

・逢えない君も 見上げてるかな

・日が暮れて 月の出るまで 酒を飲む

・浮かれた河童が また舞い踊り

・何もない 日々に花でも 咲かせましょう

・愉しむ事が 人の性(さが)かな

・過ぎゆけば むかしばなしの ひとつなり

・春はまだ先 暖かき夢

・枯れ葉にも 次の芽吹きが 潜んでる

・新時代 いま 押し寄せる なみ

・彼方(かなた)より 風がおしえる 花の香を

・楽しき園に 鳥は告げ来る

【記】今回もオンライン連歌会で、年末の12/29に開催し、2020年(今年)のコロナ騒動などを連歌で振り返って

みることとしました。思いの外、心たのしい、楽観的な歌がたくさん出て参りました。

楽観があらわれた、という、それだけで、幸せを感じられました。

ほかにも、「中層心理が出てきた様だ」という感想や、

逆さから読んでいくと別の発見があって面白い、などの感想がありました。

逆さから読んでいくと、というのは、

彼方(かなた)より 風がおしえる 花の香を

新時代 いま 押し寄せる なみ

という風に、逆の方向から読み返していき、

救うのは 己と思い 励むべし

誰を選ぶか ノアの方舟(はこぶね)

ちはやぶる 神何ぞ 思召(おぼしめ)す

楽しき園に 鳥は告げ来る

と終わった時に、また違った解釈ができるというものです。

今回から、「月・花・酒・鳥」を我々の連歌会は必ず詠むべし

というローカル・ルールが誕生しました。「定座」のような事はまだまだ出来ませんが、

自分達のルールが出来る事はたのしく思われますね。